KPUM膝関節症研究グループ

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変形性膝関節症 痛み止めだけでいいの?

2018年9月、1年間鎮痛剤だけで治療した患者さんのMRIをとりました。

63歳女性、1年前に右膝痛で受診「あと数年だけ働きたい」というご希望でした。小売店での長時間の立ち仕事、休憩を多くとらないとお仕事ができない状態でした。

プロトン強調MR画像、初診時すでに骨棘が明瞭で内側半月板の逸脱があります。しかし内側の関節軟骨は保たれています。

私たちが行っている温熱の臨床研究や回旋リハビリはお仕事のスケジュールとあわないので鎮痛剤での治療を希望されました。最近はいろいろな種類の関節症の内服鎮痛剤が出ています。また湿布も関節症専用の強い効果があるものが出ています。1年間それらを組み合わせて処方し、2週間に一度診察して生活指導を行いました。

そして、先日膝痛はほとんどなくなり、2週間に一度の定期診察を終了して長期処方としました。あと1,2年は痛み止めでお仕事だいじょうぶかもしれません。足繁く通われている患者さんの希望がかなえられてよかったです!

でも、これが理想の治療なのでしょうか?

現在(先の画像の1年後)のMRIです

骨棘は発育し、内側半月板の逸脱はひどくなっています。

内側関節軟骨は薄くなってしまっています。その部分の軟骨下骨の骨髄浮腫が増大しているのがわかります。

軟骨の変性がわかるT2 mappingをみてみましょう。

青い部分は変性していないT2値の低い軟骨です。

外側は軟骨が傷まず青いままですが、1年後に内側は緑色の変性軟骨が増えているのがはっきりわかります。

骨髄浮腫、内側半月板の逸脱、軟骨T2 値の延長、軟骨の菲薄化はすべて今後の関節症の進行および人工関節に至るリスク因子として報告されています。この患者さんの症状も近い将来悪化する可能性があります。生活で無理をしないように詳しく説明しました。

私たち研究グループの目標は軟骨が傷まない保存療法の確立です。一時的に症状が軽減されるだけでなく、関節症がすすまない治療をめざしています。

I’m Not Ready for Metal!

これは今年のICRS Focus Meetingのテーマです。Metalとは金属、人工関節のことですね。

関節症がすすんでしまった患者さんに人工関節手術は必用です。私もたくさん執刀します。しかし、まだ軟骨が大丈夫な人はそのまま一生涯保っていく方法をつくっていきたいものです。